蘭陵王(らんりょうおう
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今井 洋之
南北朝時代末期(六世紀)中国では、北斉、北周、陳、突厥、後梁、のあいだで激しい戦いが繰り広げられていました。西暦五六四年、北周の大群が北斉の洛陽 を攻囲した際。北斉皇帝・武成帝の命をうけた蘭陵王は、わずか五百騎を率いて二十万の北周軍と勇猛果敢に戦い、金墉城を解放して国を危機から救いました。 蘭陵王(姓名、高長恭)は、北斉王族、中国歴史書に「貌柔心壯、音容兼美」とあるように、優美で柔和な顔立ちと声のなかに勇猛な心を秘め、文芸にも造詣が深かった人物です。その優しい容貌のため、味方兵士の士気が上がらず、また敵に侮られるのを恐れて、出陣に際しては必ず猛々しい仮面をかぶったと伝えられています。蘭陵王は、部下を大切にし、その後も、突厥との戦いで勇名を馳せるなど大いに活躍しました。入陣曲は広く歌い継がれ、日本にも聖武天皇の頃に伝えられたといわれます。「蘭陵王(陵王)」は舞樂で最も華麗で優雅な舞曲、代表的な左舞「走舞」として知られるようになりました。今日、ご宮中や寺社の儀 式で演じられております。博多の街を大舞台に、華麗で優雅な走舞でご奉納仕りたく標題といたしました。